湯長谷の日記

佐々木蔵之介さんを推しています。蔵之介さんがかわいいとだけ書いてあるブログです。

プレミアムリーディング「もうラブソングは歌えない」佐々木蔵之介 × 小池栄子「ひとりのふたり」(※ネタばれあります)

冒頭から何なんですが、私、立派な中年なんです。このブログでも何回か中年を自称していますが、ほんと、ナイスでもなんでもないミドルエイジ真っ只中です。


それでですね、中年な私、舞台『佐渡島他吉の生涯』の無念の中止に端を発した佐々木蔵之介さんのコロナ休暇の終わりを告げる朗読劇『プレミアムリーディング「もうラブソングは歌えない」』に馳せ参じて参りました。矢も盾もたまらずといったところで、まさかの現地鑑賞です。すみません、他にもフォルクスワーゲンとか、ペンの贈り物を受け取るとか、いろいろ蔵之介さんのお仕事ありましたが、インパクトの大きさとしては、この朗読劇をもってして、佐々木蔵之介再スタートという認識でもいいかなというところで休暇の終わりだなんて言葉すべり気味にでっかく書かせていただきました。


会場につくまでの恋する乙女(中年)のドキドキ日記も残しておきたいのですが、今日はちょっとそのあたりの話は飛ばし気味に…。ということで、会場につき、まずは1作目「Re:」の鑑賞。これについてもまた今度余力があれば日記を残しておきたいです。この作品は以前に別の役者さんのバージョンを見たことがあったので内容はわかっていたのですが、繰り返し見たとしても高まりに高まった後の最後の衝撃は鮮烈に感じられると思う…。こちらの内容も中年の今見ることで強烈に刺さるところがあったっていうことを日記に書きたいです。忘れないようにここにメモ。


1作目「Re:」が終わって、休憩タイム。「Re:」で使われた椅子とテーブルが片付けられ「そっか片付けるのか、消毒とか必要だしね…」とか思いながら設営を眺めていると、何やら、演者のバックにものがたくさん運ばれてくる…。楽器?音楽つきなの?とびっくり。蔵之介さんの舞台用に運ばれてきた椅子が背もたれが木のタイプで「長時間座るのきつそうだな…52歳だからいたわってあげて!」と心配しました。でも、後からわかることだけど、立ったり座ったりよく動くし、全然問題なしでした。そもそも、もう1つの大事な舞台装置が木のベンチだしね!しょっちゅう立ち歩かないとお尻痛くなっちゃう!


向かって左からコントラバス、ギター、クラリネット奏者の方々が並び、いよいよ、「ひとりのふたり」の幕開けです。すみません…ここから1パラグラフ、壮大な自慢が入ります!言います!私、めちゃくちゃ、めちゃくちゃ、しつこいけどもう1度、めちゃくちゃいい席でした。ローチケ、ありがとう!!ローソンの株主になれば恩返しできる?ローソンって三菱商事系列だっけ?私の今後の推し事人生・観劇人生において、これ以上いい席は望めないのでは?私の舞台運ここで全部使い切ったのでは??というくらい、すさまじい良席でした。発券した時は我を忘れるほどびっくりではなかったのですが(もちろん、かなり前だな〜とは思ってチーム申すごいなあって感激してた)いざ会場について席順チェックした時「ふんっ??」ってマスクの下で声出たよね。なんだったら、マスクの下で1人顔芸してたといっても過言ではない。なんていうか、佐々木蔵之介様とのソーシャルディスタンスに関して責められることがあれば、もう切腹やむなしというくらいの席でした(混乱の極みで何を言っているかわからない)。私の席の周りってどのくらいチーム申枠だったのかなっって答えのでない問いかけを心の中でしてしまいました。私の周りにいた方々に「ねぇねぇ、今日はみんな誰推しで来てるの〜?私、蔵之介推し〜!」って話しかけたかったのですが、会場での会話は極力控えるよう言われていたので、そういう破廉恥な行為は謹みました。


ちょっと長くなりました。ということで、ついに舞台の始まりです!蔵之介さんは白地に淡いツートンの色味の入ったシャツにベージュのボトムス、そして、紐で結ぶタイプの靴をお召しだったと思います。最近のメディア露出の時に気になっていたお髭は…?ない…ってことでいいのよね??うっすら…とは思ったのですが、剃ったっていうことよね…?コンシーラーで隠せるレベルの話じゃないもんね?それとも、整髪料(整髭料か…)的なものであのちょび髭セッティングをしないと意外と普通な感じだったりするの?


ストーリーとしては、音楽教室で再開した、学生時代につきあっていた2人のお話が展開されます。今はお互い42歳、お互い独身。2週間に1度、男性の方のレッスンが終わったあと、女性のレッスンが始まる前のきっかり15分間おしゃべりをするようになり…というものです。そもそも相手がまだ独身なのかどうかというところの探り合い(というより、自分の中での自問自答)から始まるわけですが、なかなか相手に踏み込まない感じに2人のキャラクターが表れているのと同時に、大人の分別と諦めが感じられてとても良い。2人の会話(木のベンチ)の合間の独白シーン(木の背もたれの椅子)で、2人がどうして独身であることを選んだのか、選ぶっていうほど積極的なものでもないかもしれないけど、どういう道のりを歩んで今にいたるのかっていうあたりが語られます。


せつおさん(蔵之介さんの役。「せつ」は「うだつ」と書くそうです!)の独白の中で、まりこさん(小池栄子さん)と付き合った後、女性と付き合ったことがないということが語られているところで「酸いも甘いもかみわけてない」みたいなセリフがあったのですが、そんなことはないんです、仕事で管理職に片足を突っ込み始めたころの話という感じでしょうか、大きなプロジェクトのリーダーを任されたけれど、人をマネージすることが苦手で自分で全部やってしまえばいいという感じになってしまい、長時間労働を繰り返しているうちに心身を壊してしまった思い出を語っているシーンがありました。一人きりでなんとか体調不良(なんてもんじゃないよね)をやり過ごし、位置情報ゲーム(ここ、ポケモンだっけ?ドラクエだっけ?記憶が混迷してる)を楽しみながら散歩できるようになったくだりが淡々と語られる様子が、もう本当にたまらなかった、ていうか、正直泣いた。


いつものレッスンの日にまりこさんが来なくなって、一緒に行く人のあてもないのに買ったペアチケットでオリンピック観戦に誘いたかったせつおさん、教室の1階に新しくできたカフェにまりこさんと一緒にいきたいなと思っていたせつおさん、まりこさんに避けられるようになったのは何がいけなかったかなと自問自答し、そうだ、自分は一人で生きるんだったということを自分に言い聞かせます。
そのころ、まりこさんはお父さんの具合がよくないため、こまめに実家に帰るようにしていました。そう、もうねえ、このくらいの年になってくると、独身組も既婚組も、自分たちの生き方や選択がどうのこうの、やれ、子育てがどうのと喧々諤々している余裕がだんだんなくなるのよ…親の問題が自分の人生に大きく関わってくるようになるんだわ…。


やがて社会状況の変化と共に、音楽教室の発表会は中止になり、みんながテレワークをするようになり、「1人ですごす」ということがある意味究極に突き詰められてきたような日々がやってきます。1人ですごすことに慣れている2人、意外と快適そうに過ごしていると言えば言えるかな…という感じでしょうか。ただし、このまま本当に人生における大変なこと・楽しいことを1人で受け止めていけるのかな、という気持ちも持ちながら。


久しぶりに再会したせつおさんとまりこさん、またレッスンの間の15分間、おしゃべりをします。相手との関係に一歩踏み出そうとした時、また、レッスン開始のチャイム。2人はまたおしゃべりを中断し、2人とも「これからは1人で生きるんだな」と自覚した時に買ったと語っていた楽器を手にし、それぞれの音楽を奏でます。


あの後、2人が恋愛や結婚といったステージに進むことがあるのかどうか、1人でいつづけるのかどうか、明確に表さなかったところが好ましかったです。「もうラブソングは歌えない」という公演全体のタイトル、最初に見た時は「なんだよ、歌っとけばいいじゃん」と思ったものですが、今の私のこの年代でこの舞台を見たあとならば「ああ、確かにね…」と思うところが多かったようにかんじます。ラブソングのような単純化されて情熱的な恋愛(やその先にある結婚)で人生の問題の全てがハピリーエバーアフターな感じで一刀両断に解決できるなんて考え方にはさすがにもうなれない。人生の問題や寂しさには結局のところ1人で向かい合って行かなくてはいけない。人生と折り合いをつけながら、歩きたくない日だって愚直に歩み続けなくてはならないというのは、恋人や配偶者、家族の有る無しには本質的には関係ないこと。「男は(女だって!)40を過ぎると習慣と結婚する」、このあとの推定何十年かの人生、だいたい最近のこの毎日の雰囲気の延長で、消化試合みたいにやっていくんだろうなと思う。私なんかだと、家事をして、仕事をして、子供の宿題のマル付けをして(これは数年で終わりそうだけど)眠る毎日。自分の人生だいたい見えてきたことに恐怖に似た気持ちを覚える日もあって、ミドルエイジクライシスという言葉が人ごとではないなと感じる時もある。人は多かれ少なかれ、寂しいしつらい。人生にも他人にもそんなに期待しているわけではないけれど、絶望しているというわけでもない。誰かと一緒にテーブルを囲んでおしゃべりをしたいと思うこと、自分の心をちょっと浮き立たせてくれるような趣味を楽しむこと…自分にはそんなことを願う気持ちがあるんだということに気づいてそれを認めることの大事さを忘れないようにしなくてはと思いました。カップルになることだけが100点の解答ではない、それを否定するわけではないけれど。それよりも、まずはひとりであることを受け入れているふたりの姿が私は好きでした。


ひたすら人生に疲れた中年主婦の感想文、無駄に長くなりましたが、ここで終了。観劇できて本当に良かった。あとはクラスター発生しないことを神に祈るのみ…!!!


あと、思うんだけど、まりこさんの曲の名前を「A列車で行こう」だって説明しなかったクラリネットクラスの先生、それはだめじゃない?