湯長谷の日記

佐々木蔵之介さんを推しています。蔵之介さんがかわいいとだけ書いてあるブログです。

舞台『冬のライオン』の感想

すごい…

 

何がすごいって、まず、あのセリフの量とテンポがすごい…

プロの役者さんを称賛するのにそんな稚拙な表現あるかいなと思われるかもしれないけど、いやもう、まずそれ。

 

そして、感情の強さがすごい…。みんな、そんなに感情をたぎらせて生きていたら長生きできないよ?人生、いろいろ折り合いつけていこう?

 

蔵之介さんの舞台を年一で見るくらいしか劇場にいかない私が言うのもなんですが、観劇って気持ちがいいなと改めて思いました。

誰かの感情が洪水のように自分の中に流れ込んできて、毎日同じことを堂々巡りして考えているような変わり映えのしない自分の気持ちみたいなものを一旦全部押し流してくれる。空っぽになったあとには、あれかな、世界史で習ったチグリス・ユーフラテスの大地のように肥沃な土が残って、何か新しい芽でも出てくるかしら?

 

お話は、イングランド王ヘンリー2世と、権力闘争と感情のもつれで幽閉されていた王妃エレノア、愛妾アレー、3人の王子とフランス王フィリップが、ヘンリーの後継者と領土の問題を話し合うために冬のある夜に一堂に会して…みたいなものです。

 

私にとって、似ているわけでもないのに、いろんなところでシンパシーを感じてしまうのが、恐れおおくも王妃エレノア。いったいそれがどんな情なのか、最後まで全貌はわからなかったけど、子供に向かう強烈な感情のベクトルがあるところが、自分の中にも思い当たる節があってこその共感なのでしょうかね…。

 

もちろん私は、蔵之介さん目当てでチケットを取って、頭の周りにハートを浮かばせながらいそいそと劇場に足を運んでるわけだけど、そんな私にとってもこの舞台の2本の軸は蔵之介ヘンリーと高畑淳子さんのエレノア。

 

あの大仰で芝居がかった振る舞いの全部が全力の嘘、かつ、全力の本音なのだろうと思うと、この人の生命力半端ないな、最強の女王だな(妃だけど)と感じます。さながらThe lion and the lioness in winter!

 

そもそも、この芝居の中で登場人物がそれぞれ嘘を付き合い、常に相手を叩きのめすチャンスや裏切るタイミングを図っている感じを「芝居をしている」という言葉で表現することが多々あるので、そんな時、その入れ子構造にクラクラさせられるというか、私は何を見せられているの、どこを基軸にしてあなた達についていけばいいのという振り回され感が高まって、とてもよい感じです。

 

エレノアが時折、そして、作品の最後に、疲れた、もうやめたいというようなことを言うけれど、そんなことなんて許してくれない感じ、お前は永遠に俺と戦いつづけるんだと求めるのは、お互いがお互いにとっての無二の生き甲斐だという、ヘンリーからの愛の告白だなあなんていうとちょっと括り方が雑でスイートすぎますかね…。

ベターかどうかはわからないけど、これもある種のベターハーフかなと思うと、なんなんだ、この迷惑なまでに疲れる夫婦!犬も食わないよ!

 

なんていうか、蔵之介さんがいろんなところで言っている「舞台をやり続ける理由」というのが、「その時の自分を知ることができるから」みたいな感じだと思うけど(ちょっと言葉遣いとか違うと思うけど…ごめんなさいね)、私も、蔵之介さんがその時その年で挑む作品を通じて自分自身の人生やその時の自分の有様を振り返っていけるような気がする。これがとっても嬉しいこと。

 

例えば今Amazonプライムの『HOMESTAY』をちびちび見ているのだけど、主人公は高校生で、高校生の繊細で瑞々しい絶望や感情を描くのがメインで、これも私から見るといいなあ〜うんうん、みたいな感じはあるけど、もはや実感できない、どこか遠い日の花火なわけです。それに比べて今回のような作品は、いろんな違いはあるのだけど、後ろめたいような共感がある、自分の人生にものすごく引きつけて観劇してしまう。これは、推してる俳優と年齢が近いからこその醍醐味だなあと思います。何を欲しているのか、もはや自分でもよくわかっていない、そもそも出世とか関係ないし、子供がいい学校入れば報われるというわけでもない、ましてや、黄昏流星群をやりたいわけでもない、これからいろんなことを失い、いつか全てが無に帰すということも実感しつつある、でもよくわからないけどまだやってやるぞみたいな、中年の謎のあがきというか、闘争心みたいなものを見せてくれる作品、これからも作ってほしいです。推しと共に年を重ねていけるというのはいいものですね。末長く推させてください。

 

はい、ここで、蔵之介さんの舞台を自分の人生のマイルストーンにしていこうと思っている私に朗報〜!いやーーーーーー!!!長生きはするものだね!!!秋にまた舞台あります!ペース早くない?大丈夫??

ある日突然蔵之介さんが好きになり、なぜ自分は今世で『リチャード3世』(と『マクベス』)を見ることができなかったのかと壁を殴り続けた日もあったけど、いろんな幸運が重なり映像という形で見ることができ、その時も、ああ、長生きはするもんだなと思ったものですが、そんな佐々木・グロスター公・蔵之介を愛する私、この秋、ついに、自分の目で、佐々木蔵之介×プルカレーテを見ることができる幸運をが舞い込みそうです!!!

 

生きる。秋まで全力で生きる。コロナよ、滅べ。そして、世界よ、平和になってくれ、本当に。

 

(ていうか、ほんとにルーマニア、大丈夫…?もちろん、自分の道楽ごとの行く末の話だけしているわけじゃなく、頼むよ、いろいろ落ち着いてほしい…)

 

そして、ここで観劇日記を書く時に必ずどこかに挟みたくなる、Team申大感謝祭パラグラフの始まりです!

 

 

 

こんな感じでチケットに関して強気なのか弱気なのかわからない私、まあ、当然のことながらいつかの段階で発券しなくてはならないのですが、当日の朝うやうやしくコンビニにて出してまいりました。もうなんていうか、Team申への感謝の稲妻に打たれてため息でたよ!Team先行予約〜!感謝〜!愛!!

 

そんなもったいないほどの良席に座りながら、大好きな俳優さんを恥ずかしげもなくしげしげと見つめてまいりました。年に1度発動する、恋する乙女(中年)モードです。気持ち悪くてごめんね。

 

よく響く大好きな声、誰よりもエネルギーに満ちて舞台上をのしのし動くイングランド王。作品のダイナミクスが振り切れるほどに高まる瞬間のあの立ち姿、彫刻か絵画のように、それだけで完成された1つの作品として私の美術館の中に収蔵されました。

歌舞伎はあまり嗜まないんだけど、これはこのお芝居での大見得だなって思う姿、鮮烈に覚えています。コインに刻まれる王の横顔よりもずっとずっとかっこいいですよ、陛下!

 

人間の瞳なんてとても小さなものなのに、どうしてそんなに輝いて、どうしてそんなにも見る者を引きつけてやまないんでしょうね…。蔵之介さんの目のギラつき、今回もありがたくいただきました…!

 

アリーの葵わかなさん、歌声、きれい…!さすが、ミュージカルされてる女優さん。あの歌声で会場が浄化されたのを感じました。ヘンリーから悪意を向けられても「糖蜜のよう」な存在でいられるアリー、ヘンリーからの悪意に全身全霊の悪意をもって向かいあって牙を剥くエレノアと完全に対照的。

こんなにも違う「愛情」を持つ女性2人に受けとめてもらえるなんて、陛下、もてるねぇ。

 

私は永島敬三さんの次男ジェフリーも大好きでした。人前で見せる、目尻をキュッと下げた笑顔と、一人でいる時何か企んでいる時の表情の落差がとてもよい。他者から関心を持たれていない者を表現するって難しいように思うけど、その空っぽさから脱却したいと足掻き続けている感じ、観てる側に刺さってるよ〜!

 

加藤和樹さんの長男リチャード、なんやかや言って長男っぽいというか、形はどうであれ、親への情が他の息子より濃い感じがあります。地下牢でのヘンリーとリチャードの対決、そして、それが終わった後、ジェフリーが速攻で一番に逃げ出していった一連の流れ、好きです。

 

末っ子ジョンちゃんは…みんなのペット!

 

水田航生さんのフランス王フィリップ、白スーツ、すごくシュッとしてた!小顔だしスタイル抜群だし、すごくよいよ〜、よいよい!と思いました。

 

家のことを全部ほったらかしてお芝居を見に出てくることは、今の私にとっては、1公演1回が限度。あの週末のひとときが、私にとっての一期一会の宝の時間でした。これで満足。大丈夫、ありがとう。また秋の公演を無事に迎えられますように!